Newton-X:非断熱遷移ダイナミクスのためのプログラムパッケージ

光合成・フォトクロミズム・太陽電池材料・光機能性材料といった「光」に関連する化学・物理学・生物学の研究では、電子励起状態の解析が重要になります。分子は、光を吸収することで基底状態から励起状態へと遷移し、そこからさらに別の励起状態に移ったり、基底状態に戻ったりします。

これらの過程では、異なる電子状態間のエネルギー移動や核座標の変化が同時に起こるため、「断熱近似」だけでは捉えきれません。電子状態が変化する際の核の運動をリアルタイムで追跡するためには、非断熱遷移ダイナミクスを捉える必要があります。

Newton-X とは?

Newton-X は、非断熱遷移ダイナミクスのシミュレーションを実行するためのプログラムパッケージです。Aix Marseille 大学(フランス)の Barbatti グループ を中心に開発されています。

Surface Hopping という手法を用いることで、古典力学の枠組みで分子が異なる電子状態間を行き来する現象をシミュレートできます。

Newton-X は、Gaussian などの量子化学計算プログラムと組み合わせて使います。量子化学計算プログラムで解析したエネルギー・微分勾配・非断熱カップリングなどを利用して、非断熱ダイナミクスのシミュレーションを行います。

Newton-X はオープンソースとして公開されていて、公式サイト Newton-X.org から入手可能です。GPL ライセンスの下で提供されており、研究用途で自由に利用できます。

Surface Hopping 法とは?

Newton-X では、非断熱遷移ダイナミクスを扱う手法として、Tully の Surface Hopping 法を用いています。

Surface Hopping 法では、古典的な核運動が特定のポテンシャルエネルギー曲面上を動きつつ、一定の確率で「他のポテンシャルエネルギー曲面に飛び移る(hopする)」ことが許容されます。この飛び移りの確率は、エネルギー的に近接する電子状態間の非断熱カップリングの大きさによって決まります。

詳細は、以下の文献などが参考になります:

  • Tully, J.C., “Molecular Dynamics with Electronic Transitions”, J. Chem. Phys., Vol. 93, p. 1061 (1990). DOI: 10.1063/1.459170

Newton-X のインストール

参考文献

主要論文

NewtonX
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